豊臣家の人々
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新免無二斎

豊臣家の人々   著者司馬遼太郎    角川文庫刊


豊臣秀吉は日本史上、いや世界史上、稀に見る栄達を遂げた人物である。
足軽から関白太政大臣にまで出世を遂げた非凡な彼の平凡な親族達は、
その境遇に戸惑い苦しみ多くの悲・喜劇を生み出していく。
本書はそれら豊臣家の人々を9篇の短編で描いた傑作である。

第一話 殺生関白
秀吉の姉の子である秀次は自分の力では無い、「秀吉の甥」であるという
理由だけで関白のまで出世し、その境遇の変化に精神の箍をはずしてしまう。
辻斬り、荒淫等の悪行は世間に知れ渡り、秀吉のコントロールすら受け付け
無くなる。しかし、嫡子秀頼を得た秀吉にとってもはや、
秀次は我が子の前途を脅かす邪魔者でしかなかった・・・・

第二話 金吾中納言
北ノ政所の実家(生家)杉原家の五男であった小早川秀秋は望まれて秀吉の
養子となったが長ずるにつれ愚鈍な本性を現し、人々から見放されていく。
彼が為した事は、豊臣家を潰すという事だけだった。

第三話 宇喜田秀家
秀吉の養子は多かったが、彼のみが秀吉の期待に応え豊臣家の藩屏として、
戦い、そして宇喜田家は地上から消えた。

第四話 北ノ政所
秀吉と共に豊臣家を作り上げた彼女は文官達に陥れられる武将達の庇護者であり、
秀吉の死後、彼等を動かし、徳川家康をして天下をとらしめる。

第五話 大和大納言
篤実で温和な性格から、多くの人々から慕われた豊臣家の大黒柱、豊臣秀長、
彼が臨終の床で、脳裏に思い浮かべたのは兄が故郷に錦を飾った
あの日の尾張中村の青い空だった。彼の死後、豊臣家の崩壊がはじまる。

第六話 駿河御前
旭姫にとって兄の栄達は不幸の始まりであった。ただ兄の都合により、
結婚と離婚を繰り返すしかなかった彼女の悲劇。

第七話 結城秀康
優れた資質を持ちながら、彼はそれを生かす事が出来なかった、秀頼と秀忠、
二人の弟の兄で在りながら、その才能は不要とされ、
それがあればあるほど彼の存在は浮い
ていく。

第八話 八条宮
秀吉の縁者・養子達は賢者は賢者なりに、愚者は愚者なりに
安息とは無縁の日々を送らねばならなかった。
しかし、一人だけ例外がいた八条宮智仁親王である。
彼だけが常に冷静にして平静であり、この時代を堪能することができた。

第九話 淀殿・その子
二人の悲劇は自分の意志という物が無く、他人に動かされ続けたという
事かもしれない。
かくて、豊臣家はその歴史を閉じた。

この作品は豊臣家の歴史を綴ったものである。作者の司馬遼太郎氏は
彼等豊臣家の人々を歯に衣着せる事無く、個性豊かに描いている。
秀吉とその時代を知りたい人は必読の一冊である。

入手方法は角川書店から文庫版で出版されており、
司馬氏が非常に人気の高い作家であることから容易に書店で入手可能である。
先日、すこし大きめの書店で確認した所、三件中、三件とも販売していた。





投稿本当にありがとうございました。